第1章 レッドトップエンゼルと色揚げ処理

エンゼルフィッシュはグッピーやディスカスと同じように様々な品種が存在しています。そんな中、元々の品種名があるにもかかわらず勝手な名前を付けて売られているケースやエンゼルを別の名前で販売するようなケースも稀にですが存在します。そんな例の一つとして実はレッドトップエンゼルやトリカラーエンゼルにはニセモノが存在するのです。

ニセモノといっても悪い物では無く、あるエンゼルに対して『色揚げ処理』と呼ばれる方法により別のエンゼルをレッドトップエンゼルと間違えて雑誌で紹介されたり販売されたりしているケースが稀にですが確かに存在しています。今回はダイヤモンドタイプやベールテールタイプも含めてレッドトップエンゼルと色揚げについてお話をしたいと思います。

『色揚げ処理』とは何か?カロチノイドとホルモン剤について

まず、『色揚げ処理』と一口に言っても『赤色』と『青色』では全く異なる事です。青色の色揚げ処理は主に東南アジア等から輸入されるディスカスやアフリカンシクリッドのアーリィ(Sc.フライエリィ)などが5~6cm位のまだ幼魚の段階で真っ青に発色している物を一度は見た事があると思います。

これは、本来なら大きくならないと現れない青い色をメチルテストステロンと呼ばれる『ホルモン剤』などを使用して強制的に発色させている為、普通に飼育していると色がどんどん薄くなってしまう事を経験されている方も少なくないと思います。

この『ホルモン剤』による色揚げ処理は生体に与える影響が非常に強く、メチルテストステロンは男性ホルモンですから強制的にホルモン剤を与えられた個体は雌が雄のようになってしまうなど特に繁殖能力が極端に低下する事が確認されています。(メダカやゼブラダニオを利用したホルモン剤による性転換実験などは魚類学やバイオテクノロジー関連の書籍で解説されています)

ホルモン剤がどれほど強力な薬なのか、文章だけでは伝わりませんが日本においてはホルマリンのような劇物でも場合によってはハンコだけで薬局で購入できるに対し、ホルモン剤を入手する為には薬事法により医師や獣医師が発行する処方箋などがなくては入手できないほど危険な物質として扱われています。日本では事実上は入手が困難と言えるのですが、その現実がどれほど危険な物なのか理解できると思います。ホルモン剤については使う理由もありませんからこのお話は別とします。

赤いレッドトップエンゼルを作る為の色揚げについて

エンゼルにおいて主に『色揚げ処理』は青色ではなくレッドトップエンゼルの赤みを強くするような『赤色』の色揚げです。この赤色の色揚げについてはホルモン剤のような人工的に生成されたものではなく、エビやカニ等に大量に含まれている『カロチノイド』や『アスタキサンチン』と呼ばれる赤色の成分をエンゼルに与える事でエンゼルを赤くする方法です。

写真は天然の厳選された材料を使い製造されている色揚げフードのオメガワン スーパーカラーペレット。粒が大きめですが、親物サイズのエンゼルに与える色揚げ飼料としては最適な商品です。

この色揚げ処理は赤系のディスカスやアピストグラマ、アジアアロワナや錦鯉・金魚に至るまで様々な赤色の発色を良くする為に利用されています。熱帯魚のエサとしては代表的な物では大型魚用の『クリル』やディスカス用の人工飼料(テトラや光クレスト等の真っ赤なエサ)や稚魚のえさとして欠かせないブラインシュリンプにも沢山含まれている成分で普通にエサとして魚に与える量でしたら全く問題ありませんので安心して利用する事ができます。

レッドトップエンゼルは何も色揚げ飼料を与えないで飼育を続けると、頭が『黄色』のエンゼルになってしまいます。このページで紹介している『色揚げ処理』を行う事により、黄色が次第にオレンジ色に変わり始め、与え続けることによって真紅とまではいきませんが、かなり赤くなるはずです。

エンゼルには個体差もありますので、全てのレッドトップエンゼルが均一に赤くなるという訳ではありませんが、多くの個体はこの色揚げ処理により赤く美しいレッドトップエンゼルになるはずですので試して頂ければ幸いです。当店では咲ひかり金魚 艶姿咲ひかり金魚 色揚げ沈下オメガワン マイクロペレット スーパーカラーなどの色揚げ効果の人工飼料などを与えていますので、宜しければご利用を頂けると嬉しく思います。

さて、長くなってしまいましたがニセモノのレッドトップエンゼルとは何かと言う事については、ゴールデンエンゼルに『色揚げ処理』を行った個体を現します。ゴールデンエンゼルもレッドトップエンゼルの元になっている品種だけに色揚げ飼料を与えると頭部を中心に赤くなるため、頭部が赤くなったゴールデンエンゼルをレッドトップエンゼルとして購入してしまうと色揚げ飼料を与えないと次第に黄色に戻ってしまい、レッドトップとして購入してもゴールデンエンゼルに戻ってしまうカラクリです。

同様にトリカラーエンゼルもレッドトップエンゼルにマーブル模様を加えた品種ですので、同じようにゴールデンマーブルエンゼルを色揚げした個体をトリカラーエンゼルとして雑誌で紹介されていたり、販売されている事もあるので注意が必要です。これらを見分ける方法としては、レッドトップやトリカラーは完全な透明鱗(ブラッシング系)のエンゼルの為、もしエンゼルの鱗が全て光っているような場合はそれは透明鱗ではないので単なる色揚げ処理されたエンゼルと言う事になります。見分ける際に役に立てて頂ければ幸いです。

赤色の色揚げについては、青色のようにホルモン剤を利用する訳ではありませんから誰にでも簡単にできることです。レッドトップ(トリカラー)を赤くする以外にもゴールデン(ベールテールを含めて)の色に飽きてきたら色揚げ飼料を与えて赤っぽいエンゼルに色を変えてみるのも面白いと思います。興味のある方はぜひ一度、試して頂ければ幸いです。


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