スポンサーリンク

第3章 エンゼルの病気に魚病薬が効かなくなる? 薬の利用と耐性菌の存在

エンゼルに限った事ではありませんが、熱帯魚を飼育していると必ずといって良いほど魚が病気になる事を経験する事になると思います。病気になる要因は様々で初めて魚が病気になった時は何の病気か解らずに死なせてしまうような事も多いかと思います。普通はそのような経験をしていく事により何が悪かったのか少しづつ理解して飼育が状態していくのですが、魚病薬の薬効として記載されている病気でも実は全く効果がない事も意外と多く存在しています。今回は熱帯魚の病気と魚病薬の効果について掲載してみました。

薬の効果と耐性菌の存在について

最も一般的に知られている例として「白点病」の原因とされている「イクチオフォリウス」と言う原虫が熱帯魚の体に吸着する病気がありますが、元々この病原体は28℃以上の水温では生存できないとされていました。その為、特に古い熱帯魚の入門書には『白点病が発生した際には水温を28℃以上にすると完治する』のような記載がありますが、実際は必ずしもうまく治療とは限らないのです。

これは詳しい事は解明されていませんがこの病原体が28℃以上の「高温」対して何らかの理由で突然変異を起し、耐久性を得てしまったのが原因とされています。このように元々の病原体に治療の効果がなくってしまう事を「耐性菌」の発生と呼びます。(白点病の場合は原虫なので菌ではありませんが…)

このような「耐性菌」は白点病だけではなく「カラムナリス症」や「水カビ病」、「エロモナス感染症」など様々な病気にも同じように「耐性菌」の発生が確認されてます。水産関連では良く認知されている事ですが、熱帯魚業界の場合はあまり話題になる事はないのが実情です。

この耐性菌は主に良く使用される薬に対して高い耐久性を保持している場合が多く、例えば「エルバージュ」の効能にはエロモナス感染症やカラムナリス病に効果があると記載されていますが、実際には感染したエロモナス菌やカラムナリス菌がエルバージュに対して「耐性」を持っていると魚病薬を入れたにも関わらず、病気の進行が止まらないと言う事も実際の現象として確認しています。

エルバージュに関しては耐性菌が現れにくいとされていますが、よく知られている例では「エロモナス感染症」の特効薬として利用されるパラザンなどの「オキソリン酸」は高価な魚病薬です。これは通常、価格に見合うだけの効果が期待できます。しかし、その反面では耐性菌ができやすい傾向があるとされており、効果がない場合もあるので注意しなくてはなりません。

メジャーな魚病薬とマイナーな魚病薬

魚病薬に対する「耐性」を持った病原体に対抗する方法は非常に少ないのですが、人間の例と同じに考えれば例えば「カラムナリス症」の場合は「エルバージュ」の効果がない場合でも、同じカラムナリス症に効果のある「グリーンFゴールド顆粒」や「ハイ-トロピカル」のような使用されている薬品が違う魚病薬では充分な効果を示す場合が多いと考えられます。ケースによってはそのような魚病薬の利用がベストだと言えるでしょう。

エンゼルフィッシュにとって最も恐怖の病気「エンゼル病」は治療薬の効果がない「ウイルス感染症」と言う説が有力ですが、東南アジアなどで大量に魚病薬を使用した結果、あらゆる魚病薬に対して耐性を持つ「耐性カラムナリス菌」の可能性もゼロではないと思います。

熱帯魚の病気を治療するのは判断がなかなか大変な事ですが、尾ぐされ病などの原因であるカラムナリス菌の場合は明らかにエルバージュに比べると失礼な言い方ですが…どちらかと言えばマイナーな魚病薬である「ハイ-トロピカル」のほうが感覚的にはかなり効果が高いように思えます。

耐性菌に対抗する方法はまだ耐性のできていないような薬による治療方法以外は存在しないのが実情ですので、大切な愛魚が病気になってしまった場合はどちらかと言えばポピュラーな魚病薬よりもあまり使用されていないような魚病薬を使ったほうが効果がある場合があることは覚えておいて頂けると幸いです。

スポンサーリンク

プロの語る 飼育繁殖 思案 コンテンツ一覧

第1章 レッドトップエンゼルと色揚げ処理
第2章 エンゼルの繁殖と商品としてのエンゼル
第3章 エンゼルの病気に魚病薬が効かなくなる? 薬の利用と耐性菌の存在
第4章 観賞用として作り出された様々な品種と奇形の関係
第5章 避けては通れない繁殖における選別と淘汰
第6章 最高プロポーションとは何か? 品質を求めた選別と淘汰
第7章 名前ばかりが先行する幻のブルーエンゼル
第8章 エンゼルにおける改良品種の基本パターン
第9章 組み合わせによって変化する品種の名前
第10章 純血種と雑種、改良に必要不可欠な純血種の存在
第11章 ハーフブラックエンゼルは特異な遺伝子
第12章 ラムナン硫酸が熱帯魚の脂肪肝を予防する
第13章 繁殖させた魚の処分方法


↓参考になりましたら、各種ソーシャルサイトでご紹介して頂けると光栄です。
大塚慎太郎
この記事を書いた人
オオツカ熱帯魚 店主
飼育歴40年 繁殖歴35年 プロブリーダー歴27年
専門分野エンゼルフィッシュ、ラミレジィ、アピストグラマ、その他熱帯魚類の繁殖全般

熱帯魚繁殖大鑑(緑書房)の著者であり、熱帯魚の繁殖研究で世界的に名を知られる東熱帯魚研究所 東博司氏の元で師事、長年に渡り飼育・繁殖の技術を学び独立。様々な魚種の飼育・繁殖、生態学など豊富な知識を生かしてプロブリーダーとして良質な熱帯魚類の繁殖・販売を行う。

  • アクアライフ(エムピージェイ出版)のエンゼルフィッシュ特集協力
  • 楽しい熱帯魚(白夜書房出版)のエンゼルフィッシュ・ラミレジィの特集協力
  • プレコニアの繁殖記事、熱帯魚・水草図鑑(ピーシーズ出版)への写真提供
  • Weblio辞書協力(熱帯魚写真館)
  • All About Japan 熱帯魚オンライン図鑑 写真提供
  • TV番組や出版物への取材・写真提供の協力など
スポンサーリンク
エンゼルフィッシュ.jp > プロの語る 飼育繁殖 思案 > 第3章 エンゼルの病気に魚病薬が効かなくなる? 薬の利用と耐性菌の存在