第7章 名前ばかりが先行する幻のブルーエンゼル

注意:この記事はサイトを公開した2004年に書いたもので、現在は幻となっていたブルーエンゼルは少しタイプが異なりますが、復刻されています。オオツカ熱帯魚でもブルー系統のエンゼルを多く販売しておりますので、興味のある方はぜひ当店の通販サイト、オオツカ熱帯魚の[自家繁殖エンゼル ブルー系統]のページをご覧下さい。

以下の記事は古いものですが、それまでの歴史を書いたものですので、参考までに残しておきます。

幻のブルーエンゼルとは何か?

ブルーエンゼルについてはその名前を知っている人は多くものの、名前ばかりが先行して実際に特に青いと思えないようなエンゼルが「ブルーエンゼル」の名前で販売がされる事も多くあります。私の元にも「ブルーエンゼルというエンゼル居ないですか?」や「ブルーエンゼルと言うエンゼルを見かけましたが販売の予定は無いのですか?」のような質問が寄せられますがいわゆる青っぽいエンゼルと言うレベルのエンゼルは存在していても本当に青いと呼べるほどのブルーエンゼルは未だかつて実物を見たことはありません。

なぜブルーエンゼルの名前が良く知られ、名前ばかりが先行しているのかと言う事ですが、名前ばかりが先行する理由としては、実際に突然変異によってブルーエンゼルと呼べる青いエンゼルが誕生した事のあるからです。

具体的にはかなり前の話になりますが日本のプロブリーダーとして世界中に知られる東熱帯魚研究所の東 博司先生によって作り出されました。エンゼルを繁殖している最中に突然変異によって青いエンゼルが現れ、その個体を撮影したものが私が知る限りでは最初で最後のブルーエンゼルです。

この時に現れたブルーエンゼルの写真が「熱帯魚繁殖大鑑」を始め、著書の色々な本や雑誌に登場する事がある為、その結果としてブルーエンゼルの名前と存在は良く知られながらも、エンゼルそのものは存在しないと言う幻のエンゼルとなっているのが現状だと思われます。この時に登場したブルーエンゼルは繁殖が試みられた繁殖能力が無い個体だったようで、改良品種として固定化される事無く幻のエンゼルとなり現在に至るようです。

現在でもブルーエンゼルを求めた品種改良は世界中で行われておりますが、未だに本当の意味での「青いエンゼル」は登場してはいないと思います。そんな中でも稀に「ブルーエンゼル」の名前で販売されているエンゼルが存在するのは、そんな品種改良の途中のようなエンゼルが稀にですが出回るような事によるものです。

流通する「ブルーエンゼル」とは?

正直な所、私は輸入のエンゼルとはエンゼル病の持ち込みが怖いので全く接触をしていません。そのため、リアルタイムにどのようなエンゼルが作られているのかまではよく知りませんが、ここ2004年までの傾向としては遺伝子的に言えばノーマルブラッシングエンゼルと呼ぶ事ができる透明鱗のエンゼルで青みの強い「ブルーブラッシングエンゼル」と呼ばれているエンゼルが稀に流通する事があり、このような事から推測すると透明鱗(ブラッシング系)のタイプがブルーエンゼルとして改良が進められているように思えます。

これとは全く別の物に「カラーエンゼル」と呼ばれる東南アジアでエンゼルに赤・青・黄色・紫と言った色を注射して売られている事があります。このような人工着色は注射器を使い無理矢理に魚へ色を着色するので、他の熱帯魚に無い蛍光色の為、古くから存在しているカラーラージ(ラージグラス)から始まり、カラーコリドラス(白コリ)、カラーアピスト(Goラミレジィ)、カラーグラスキャット(トランスルーセントグラスキャット)やグラミー、エンゼルまで様々な物が作られました。グラスキャットは元々デリケートな魚でしたから色素の注射による死亡率が高かったようですぐに姿を消してしまいましたが、カラーラージやカラーコリドラスは今でも見かける事が多いと思います。

このような人工着色魚は改良品種と呼べるものではありませんが、現実として特に熱帯魚を飼い初めて間もない初心者にはある程度の人気があり、このような魚の需要があることも事実です。しかし、人工着色の「青」を注射したホワイトエンゼルをブルーエンゼルとして売られているケースもあるようで本当のブルーエンゼルを求める人間としては情けない思いになります。このようなエンゼルをブルーエンゼルと呼ぶ事は余計な誤解を生むだけですので避けて頂きたいものです。

他にも「ブルーエンゼル」と呼ばれる魚は多く、勘違いしやすいのが「海水魚」のブルーエンゼルです。海水魚でも「エンゼル」と呼ばれるヤッコの仲間などが存在します。その中でも青い種類をブルーエンゼルと呼ぶので、アクアリウムの雑誌などで海水魚のお店とわかりにくいような場合は淡水魚のエンゼルと海水魚のエンゼルを誤解するような事もあるようです。この他にもディスカスにも「ブルーエンゼル」と呼ばれている品種もあるそうで、このような事もブルーエンゼルと言う改良品種が存在するような誤解と混乱を増やす要因となり難しいものになっているのだと思います。
 
このようにブルーエンゼルは今でも幻のエンゼルであり、世界中のエンゼルファンの夢でもあり、私としては安易にブルーエンゼルの名前を出してもらいたくないと言う思いが強くあります。エンゼルフィッシュの名前はある程度自由につけられている事もありますが、青っぽい程度のエンゼルをブルーエンゼルの名前で売るような行動によりそのような質問をされる事も非常に苛立ちを覚えます。エンゼルを本当に愛するのであれば、もしそのようなエンゼルを購入したとしてもそれをブルーエンゼルと呼ぶような事は辞めて頂きたいと思います。

私はブリーダーとしてエンゼルを殖やしている為、人並み以上にブルーエンゼルへの思いはあります。本当に青いエンゼルが登場しない限りはブルーエンゼルの名前は使う物ではないと思です。エンゼルの呼び名はある程度は人の自由な部分がありますが、誤解を招くような行動だけは避けて頂ければ幸いです。

少なくともブルーエンゼルに関しては1度この世界に生まれて来たエンゼルですから、同じように突然変異によって現れる事も充分に考えられるはずですからこの幻のエンゼルがもう一度現れることを心から祈りたいと思います。



エンゼルフィッシュ.jp > 飼育繁殖 思案 > 第7章 名前ばかりが先行する幻のブルーエンゼル