エンゼルフィッシュを繁殖させる際に避けては通れない問題が繁殖されたエンゼルの選別と淘汰です。不要な個体を〆て生ゴミとして処分できるメンタルをお持ちの方には不要だと思いますが、著者含めて多くの方はその行為に良心の呵責と罪悪感に耐えられないと言う問題があります。
そこで罪悪感を少しでも減らす方法としてお勧めしたいのが、処分するエンゼルを食べてくれるフィッシュイーターの飼育です。一口にフィッシュイーターと言っても非常に種類は多く、飼育に大きなスペースが必要な種類も少なくありません。なるべく狭い水槽で飼育が可能で、飼いやすい種類をピックアップしておきます。
お勧めのフィッシュイーター 水槽60cm以下
■ションブルギー・リーフフィッシュ(Polycentrus schomburgkii)
別名をアフリカンリーフフィッシュやポリセントラスとも呼ばれ、成長しても全長4〜7cmほどの小型フィッシュイーターです。最低30cmほどの水槽でも飼育できます。小型ですので、まだエンゼルが小さいうちに処分する必要がありますが、飼育に大きなスペースが不要な点は大きなメリットになります。デメリットは何時でも入手できる熱帯魚では無いため、入手するのに苦労する場合があります。
■メコン・フグ(Pao cochinchinensis)
最大10cmほどまで成長する東南アジア産の小型フィッシュイーターです。最低45cmほどの水槽でも飼育できます。口が小さいので、なるべく本種が食べられるサイズのうちに処分できる場合にお勧めしたい種類です。淡水フグの仲間では、テトラオドン・ショウテデニーやテトラオドン・バイレイ、インドシナレオパードパファーなども同様で45~60cmほどの水槽があれば生涯飼育が可能です。
■チョコレート・ナンダス(Nandus nebulosus)
最大13cmほどまで成長する東南アジア産の小型のフィッシュイーターです。最低45cmほどの水槽でも飼育でき、成長すればSサイズまでのエンゼルなら捕食出来ると思いますが、なるべく本種が食べられるサイズのうちに処分できる場合にお勧めしたい種類です。
■オヤニラミ(Coreoperca kawamebari)
最大15cmほどまで成長する日本産のフィッシュイーターです。飼育に加温は不要ですが、水温が低すぎると餌を食べなくなりますので、水温20℃以上の飼育を心掛けた方が良いでしょう。45~60cmほどの水槽で飼育可能、大きくなればSサイズ位のエンゼルまでなら捕食可能です。比較的、入手もしやすいのでエンゼルが小さいうちに処分できるなら、お勧めできるフィッシュイーターです。
オヤニラミよりも大きくなるコウライ・オヤニラミも存在しますが、こちらは日本で密放流と思われるものが、外来種として定着が進んでいる現実があります。その為、コウライ・オヤニラミは将来的に飼育禁止となる恐れがかなり高いです。サイズも扱いやすいのですが、心無い人たちによって飼育の選択肢が無くなりつつあるのは悔しい思いがあります。
■リーフキャット(Tetranematichthys quadrifilis)
サイズは約8~15cmほど、南米原産の枯葉に擬態するナマズの仲間です。ウッドキャットと比べて魚食性が強く、大きな個体ならSサイズ位のエンゼルまでは食べられます。普段は置物のように動かないため、45~60cmほどの水槽でも飼育できる種類です。デメリットは流通量が多くないため、入手するのはやや難しい種類と言えます。
■ストライプ・ホーリィ(Hoplerythrinus unitaeniatus)
サイズは約20~25cmほどになるハゼ型フィッシュイーターの中型カラシンです。あまり活発に動く種類では無いため、45~60cmほどの水槽で生涯飼育が可能です。成長した個体はその大きな口でSサイズほどのエンゼルまでなら捕食できるようになります。デメリットはワイルド個体しか流通しないため、入手できる機会があまり多くない事でしょうか。パープルレインボー・ホーリィやオレンジフィンキリー・ホーリィもほぼ同様と考えて良いでしょう。
■バトラクスキャット(Asterophysus batrachus)
サイズは約20~25cmほど、非常に大きな口をもつ特徴的な南米産のナマズです。あまり活発に動く種類では無いため、60cmほどの水槽で生涯飼育が可能です。成長した個体はその大きな口でMサイズほどのエンゼルまでなら捕食出来ます。顔つきもユーモラスで昔は入手困難なナマズでしたが、近年ではシーズンになると定期的に輸入されるようになり、入手しやすくなっています。
■ピラニア・ナッテリィ(Pygocentrus nattereri)
サイズは約25~30cmほど、言わずと知れた有名なピラニアです。1尾だけなら成長しても60cm水槽で生涯飼育をすることができます。その鋭い歯でエンゼルのサイズに関係なく捕食することになりますが、一口で食べられないサイズを与えると、硬い頭だけが食べ残されるようなホラーな状態になることもあります。盛んに養殖されているので入手は容易ですが、危険な熱帯魚ですので、扱いには注意が必要です。
■ポリプテルス・セネガルス(Polypterus senegalus)
サイズは約25~30cmほど、ポリプテルスの仲間では最も小型な種類で45~60cmほどの水槽でも飼育できます。口はそれほど大きくないため、成長した個体でもSサイズのエンゼルでも捕食するのが厳しい場合があります。まだ小さいうちに処分できるなら候補として悪くありません。Po.パルマス(ポーリー)やPo.レトロピンニス(モケーレムベンベ)もほぼ同様です。
■ドワーフ・スネークヘッド(Channa gachua)
サイズは約15~20cmほど、上記のポリプテルス・セネガルスと同様に小型で飼育に広いスペースは必要ありませんが、食べられるエンゼルサイズもSサイズに満たない程度の大きさに限定されます。近縁種のレインボー・スネークヘッドもほぼ同じですので、好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
お勧めのフィッシュイーター 水槽90~120cm
■フラワートーマン(Channa pleurophthalma)
最大30~40cmほどまで成長する東南アジア原産の中型スネークヘッドです。オセレイト・スネークヘッドと呼ばれることもあります。大きくなりすぎず、90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。成長した個体はMサイズくらいのエンゼルまでは捕食出来るようになります。
■オレンジキャット(Cephalosilurus apurensis)
最大40~50cmほどまで成長する南米産のナマズです。あまり動くことの少ないナマズの為、90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。(できれば120×60×45cmを推奨)口が大きく、成長した個体ならLサイズまでのエンゼルなら捕食出来るため、柔軟性が高いと言えます。人にも懐くのでペットとして飼うのも悪くない種類です。デメリットはワイルド個体しか流通しないため、シーズン以外は入手が難しいところと言えます。
■ホーリィ(Hoplias malabaricus)
最大40~50cmほど、ハゼ型のフィッシュイーターの大型カラシンです。あまり活発に動き回る種類では無いため、90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。近縁種のブラックタライロンもサイズはほぼ同じなので、どちらも良い対象となります。成長した個体ならMサイズまでのエンゼルなら捕食出来るでしょう。デメリットはほぼワイルド個体しか流通しないため、シーズン以外は入手が難しいところと言えます。
■テトラオドン・ムブ(Tetraodon mbu)
最大50~70cmほど、世界最大の淡水フグとして知られている種類です。水槽内で50cm以上に育てるのはなかなか大変ですが、成長した個体はとても迫力があります。当面は90×45×45cmの水槽でも飼育できますが、将来的には120×60×45cm以上の水槽が必要です。口の大きさはあまり大きくないので、処分できるエンゼルのサイズは限定的になります。テトラオドン・ファハカもほぼ同様と考えて良いでしょう。
■ポリプテルス・オルナティピンニス(Polypterus ornatipinnis)
最大50~60cmほど、大型のポリプテルスですが、体の柔軟性は高いため、90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。(できれば120×60×45cmを推奨)成長した個体はエンゼルのMサイズ位までは捕食する事が出来るようになります。Po.エンドリケリーもほぼ同じですので、好みに合わせて飼育すると良いでしょう。
■ブラックアロワナ(Osteoglossum ferreirai)
最大50~60cmほど、シルバーアロワナと比べて小型で柔軟性の高い体を持つため、90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。(できれば120×60×45cmを推奨)成長した個体なら、やや小さめのLサイズまでのエンゼルなら捕食出来るようになります。アロワナの仲間としては神経質な面がありますが、単独で飼育する分には飼育は難しくないので、候補としては悪くない種類です。
■アマゾン淡水エイ(Potamotrygon histrix)
ポタモトリゴン・ヒストリクスと呼ばれるアマゾン産の淡水エイです。淡水エイの仲間は大きくなる種類が多いですが、この種類は比較的、小型で90×45×45cmの水槽でも生涯飼育が不可能ではありません。(できれば120×60×45cmを推奨)成長した個体ならMサイズまでのエンゼルなら捕食出来るでしょう。デメリットは飼育がやや神経質で難しい面があり、状態の良い個体を入手するのも難しい点が掲げられます。レティキュラータ・スティングレイもほぼ同様です。
お勧めのフィッシュイーター 総轄
フィッシュイーターの仲間は非常に多くの種類がいますが、その中でもエンゼルの処分に適した種類として挙げさせてもらいました。無論、趣味で大型のフィッシュイーターをすでに飼育しているのであれば問題は無いですが、新規で飼育する場合の参考にして頂ければ幸いです。
普段から平気に豚や鳥などの肉や魚を食べているのに、自分で殺処分するのは抵抗がある、これは矛盾した行為ですが、そう言ったエゴも人間なので仕方がない事です。それでも選別と淘汰は避けられませんので、少しでも罪悪感が薄れるように、飼育の助けになることを祈ります。
プロの語る 飼育繁殖 思案 コンテンツ一覧
第1章 レッドトップエンゼルと色揚げ処理
第2章 エンゼルの繁殖と商品としてのエンゼル
第3章 エンゼルの病気に魚病薬が効かなくなる? 薬の利用と耐性菌の存在
第4章 観賞用として作り出された様々な品種と奇形の関係
第5章 避けては通れない繁殖における選別と淘汰
第6章 最高プロポーションとは何か? 品質を求めた選別と淘汰
第7章 名前ばかりが先行する幻のブルーエンゼル
第8章 エンゼルにおける改良品種の基本パターン
第9章 組み合わせによって変化する品種の名前
第10章 純血種と雑種、改良に必要不可欠な純血種の存在
第11章 ハーフブラックエンゼルは特異な遺伝子
第12章 ラムナン硫酸が熱帯魚の脂肪肝を予防する
第13章 繁殖させた魚の処分方法
