エンゼルフィッシュは中型の熱帯魚として、非常に温和な仲間です。成長に従ってエンゼル同士で喧嘩する事はありますが、これは繁殖に向けてペアとなるパートナーを探す為に必要不可欠な行動です。しかし、それ以外では非常に温和な為、同じようなサイズの魚と一緒に飼うと逆にイジメられてしまうほどです。このページではエンゼルと他の熱帯魚との相性について紹介します。
エンゼルフィッシュに危害を加える熱帯魚について
エンゼルフィッシュはその独特の体型からそれほど速く泳ぐことは出来ません。従ってあまりにも水槽内を活発に泳ぎ回るような熱帯魚はエンゼルフィッシュのストレスになってしまいます。他にも長いエンゼルフィッシュのヒレを噛るような魚も一部に存在し、もちろんピラニアのような魚は論外だと言えるでしょう。
では、どのような魚が相性の悪い魚なのか、より具体的な魚の相性については混泳マニュアルにて掲載しますが、ここでは代表的な相性の悪い魚をご紹介します。
相性の悪い魚の代名詞 スマトラ
この魚はエンゼルフィッシュの飼育に関して記述されている書籍では、必ずと言って良いほど一緒に飼育してはいけない熱帯魚として紹介されています。主にエンゼルフィッシュのような長いヒレを噛る癖がある為、同じ水槽で飼育しない方が賢明です。
改良品種の「白スマトラ」や「モスグリーンスマトラ」などはやや温和と言われますが、やはり混泳させるのは避けた方が良いでしょう。似た系統のコイ科に分類される魚種にも同じ様な癖がある種類も居るので注意しなくてはいけません。
ケースによってはエンゼルに危険を与えるプレコの仲間
プレコの仲間は非常に多くの種類が存在していますが、その中でもセルフィンプレコとサッカープレコは最も安価なプレコの1種です。よくコケ掃除用にエンゼルの水槽でも一緒に飼育されている場合がありますが、これも実はエンゼルフィッシュを稀に死なせてしまうほど危険がある混泳の一つです。特にプレコのサイズが10cmを越えた辺りから気が荒くなる為、エンゼルとの混泳は注意が必要になります。
また、この魚は成長するとサッカープレコで30cm、セルフィンプレコは50cm以上にもなる大型の熱帯魚ですから、単に「コケ取り用」に飼育するには大きく成長してしまいます。ちゃんと最後まで飼育する覚悟、もしくはショップに引取りの依頼をできる事を確認するなど、前もって対応できる方法を用意できなければ、避けた方が賢明でしょう。
活発に泳ぎ、気の荒い仲間が多い中型のコイ・カラシン・シクリッド
エンゼルフィッシュ同様に10cmを越えるような熱帯魚も数多く売られていますが、中型の熱帯魚は小型魚に比べて基本的に気の荒い仲間が多いのが実情です。 気の荒い魚同士であればある程度の調和が取れますが、エンゼルフィッシュのような温和な魚とは一緒に飼育しない方が賢明です。ただ、組み合わせによっては飼育可能な方法も全くないわけではありませんから、混泳させる場合は飼育に慣れた上級者になってからにする方が良いでしょう。
夜間に活発に動き回る夜行性の魚たち
基本的に中・小型のナマズの仲間は口に入らないような魚は襲うことの無いため、エンゼルフィッシュと一緒に飼育する事は問題ありません。しかし、ナマズの多くは夜行性の為にエンゼルフィッシュが寝ている所に活発に泳ぎ回るようなナマズは、エンゼルフィッシュの事を考えれば好ましくない仲間と言えるでしょう。著者も実際にナマズの仲間やブラックゴーストなども一緒に飼育する事があるので、エンゼルがストレスにならない程度にするべきと考えて自らの判断で行うのが理想的です。
エンゼルに食べられてしまう小型の熱帯魚
いくらエンゼルフィッシュが温和な熱帯魚でも、口に入ってしまう小さな熱帯魚では食べられてしまう場合があります。子供の頃はあまり問題ありませんが、特に若魚~親魚になると10cmを越える為に細身の魚だと比較的大きなものまで食べてしまう恐れがあり、混泳には注意が必要です。 下記には具体的な例の一部を掲載しておりますので参考になさってください。
Sサイズのネオンテトラ
基本的に「ネオンテトラ」はSサイズとLサイズの2種類が販売されている場合が多いようです。エンゼルフィッシュがまだ小さい場合は問題ありませんが、若魚~親魚になったエンゼルフィッシュではSサイズのネオンテトラでは口に入ってしまう為、食べられてしまいます危険性が高くなります。特に子供の頃からネオンテトラと一緒に飼育された経験の無い場合は「同居魚」と言うよりも「餌」として認識しやすい傾向があり、注意しなくてはなりません。
グッピー等の卵胎生メダカの仲間
グッピーやプラティのような熱帯魚は、エンゼルフィッシュと一緒に飼うのは特に大きな問題はありません。しかし子供を増やしたい場合は注意が必要です。特に「卵胎生」と呼ばれているメダカは卵で生むのではなく、すぐに泳げるような状態で子供を出産します。この生まれたばかりの子供は非常に小さく、エンゼルフィッシュにとっては格好の「餌」になってしまいますから注意が必要です。
もし、同じ水槽で増やしたいのであれば「ウイローモス」や「マツモ」のような密集する水草を沢山植えて飼育し、子供を確認したらグッピーなどに利用される産卵箱に移動する事をお勧めします。逆に子供が殖え過ぎて困るようなことを避けるには、エンゼルのような魚を混泳して利用する飼育方法も選択枝と言えるかもしれません。
水草水槽でお馴染みのオトシンクルスの仲間
水草水槽のコケ掃除役として活躍するオトシンクルスの仲間ですが、エンゼルフィッシュが子供の時は問題ありませんが、大人になると小さなオトシンクルスでは口に入ってしまう場合があります。もしも、そのような状況になるとオトシンクルスだけではなく、エンゼルフィッシュも口にオトシンクルスが詰まって死んでしまうケースも報告されていますから注意が必要です。著者自身も多く混泳をしていますので、問題の無いケースが大半ですが、特に大きなエンゼルとオトシンクルスの混泳には頭の隅には注意しておく気持ちを持っておくべきでしょう。
エンゼルフィッシュと小型魚の混泳における基本
小型魚との混泳については絶対に危険な組み合わせはごくわずかです。エンゼルフィッシュは基本的に動物性の餌を好みますが、「アルタムエンゼル」の幼魚を除いてそれほど魚食性の強い魚ではありません。 少なくとも若親(10cm以下)のサイズであれば、よほど極小サイズ(2cm以下のレッド・テトラなど)を除いて問題なく飼育できます。
また、狭い水槽で水槽内のレイアウトが何も無いような状態では危険な組み合わせでも、広い水槽で沢山の水草などを植えてある水槽ではネオンテトラのSサイズやオトシンクルスの仲間も何も問題ない場合も多く見受けられます。
混泳のポイントは「襲われても隠れられる物陰」の有無とエンゼルフィッシュの空腹感が大きく影響するという事です。簡単に言えば水草を沢山植えたり流木である程度複雑にレイアウトした水槽ではOKでもベアタンク(水槽にフィルターやヒーターのみの飼育方法)の場合はダメと言った形でしょうか。
アロワナとエンゼルを混泳させているような猛者の方もいらっしゃいますし、絶対にこれはダメと言えるようなものは生き物相手ですので、なかなか難しいものがあります。難しい混泳を可能にするにしても、基本を抑えておくのは必要最低限の知識として、学んでおくのが理想的です。
飼育マニュアル コンテンツ一覧
第1章 エンゼルフィッシュってどんな魚?
第2章 失敗しないエンゼルフィッシュの購入ポイント
第3章 エンゼルフィッシュの飼育に最適な水槽と飼育可能な数
第4章 エンゼルフィッシュの飼育に最適な濾過装置とは?
第5章 エンゼルフィッシュに最適な餌はどんな餌?
第6章 エンゼルフイッシュに最適な水温・水質と飼育可能な範囲
第7章 エンゼルフィッシュと混泳に注意が必要な熱帯魚
第8章 エンゼルフィッシュと混泳の相性が良い熱帯魚たち
第9章 品種によって異なるエンゼルフィッシュの飼育難易度
第10章 エンゼルフィッシュの寿命と繁殖可能な年齢
第11章 輸入エンゼルフィッシュとエンゼル病
第12章 病気とその対処方法
第13章 エンゼルフィッシュ水槽のレイアウト